冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「あ、すみません、タクシーを一台……え!? 動けない?」
「どうしたの?」
「近くで土砂崩れがあって、来られないって。どうしようか。保に来てもらおうか」
「そうだね」

そう答えている間にもどんどん額に脂汗が滲む。心の中で陣痛の間隔を図っていたが、5分おきにきているようだった。

「澪、しっかり」
「ん、大丈夫」

だが次の瞬間、澪は痛みに耐えられず、その場に崩れ落ちた。

「澪―!」

光江の叫ぶ声が聞こえる。初産でこんなにもお産が進むのが早いなんて思ってもいなかった。完全に見誤っていた。しかもすでにいきみたい感覚が襲っている。下手したらこのまま産んでしまう。澪は呼吸を整えなんとか耐えた。

「今救急車呼ぶからね」

意識がもうろうとする。こんな状況のせいか、よからぬことまで頭を過る。

自分がいなくなったら誰がこの子の面倒を見るのか……と。

「大丈夫ですか!?」

するとそこに、一台の車が止まった。雨が降っているのにも関わらず、傘もささずに運転席から誰かが駆け寄ってきた。


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