冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「どうして……こんなひどいこと」
走って追いかけたいのに足が動かない。文句を言ってやりたいのに、声すら出ない。
(困っているからと思ったから。お母さんを早く安心させてあげたかったから。ただそれだけだったのに)
気がつくと雨はひどくなり、澪の体を容赦なく打ち付け始めた。周りは急いで走り出しているのに、澪だけその場に立ち尽くしたまま。
頭からはぽたぽたと雨が落ち、服もずぶ濡れ。でももうどうでもよかった。自分は結局そういう女なのだ。今まで誰かに選ばれたことはない。不愛想で可愛げがない。誠の言う通りだと思う。
「ふっ……うぅっ」
惨めで情けなかった。消えてしまいたい。
泣き崩れてしまいそうになった時、真横に黒のセダンが止まった。
「神谷?」
中から声をかけてきたのは、匠馬だった。