冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「どうした? 大丈夫か?」
路肩に車を止めると、血相を変えて走ってきた。
足元の水が跳ね、高級そうなスーツを濡らしているが匠馬は気にする様子もなく、澪の元までやってきた。
「ずぶ濡れじゃないか。何があった」
「……何でもありません」
「そんなことが通じると思ってるのか。ほら、乗れ、送ってやる」
ふるふると顔を横に振る。こんな情けない顔、見られたくない。それにこんなずぶ濡れのまま車に乗るわけにはいかない。
「いいから来い」
強引に肩を抱かれ、慌てて拒む。
「離してください」
「泣いている部下を、置いて行くような非道な男にしたいのか」
「そ、それは……」
「嫌なら来い」
路肩に停めていた車に半ば強引に乗せられると、車はどこかへと向かい始めた。
(社長にこんな姿見られるなんて……)
澪は革張りのシートに雨粒が弾くのを、ただ憮然と見つめていた。