冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「じゃあ、なにかさっぱりしたものを」
「さっぱりか」

言いながら匠馬がスマホで検索している。最近は一人前すら食べられなくなっている。においを嗅ぐのも気持ち悪くて、お陰で3キロほど痩せてしまった。やはりこれはつわりというやつなのだろうか。

懸命にお店を探す匠馬の隣でそんなことを考える。こんな至近距離にいたら、心が読まれてしまわないか、ドキドキしてしまう。そんなことありえないのに……。

「ここなんてどうだ? ここから近いみたいだし」

ぼんやりしていると、匠馬がスマホを差し出してきた。澪は助手席から見を乗り出し、それを覗き込んだ。

「お刺身、ですか」
「あぁ、どうだ。嫌いか?」
「いえそういうわけでは」

生物は食べてもいいのだろうか。そもそもダメなものとかあるのか。

(……って、そうと決まったわけじゃないのに)

すでにそんな心配をする自分に驚く。



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