冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「あの、やっぱりお蕎麦とかがいいです」
「あぁ、いいな。じゃあここなんてどうだ?」
言いながら再び検索しなおしたものを澪に見せてきた。
「いいですね」
「じゃあ決まりだな」
機嫌よく目を上げる匠馬と至近距離で目があう。その途端、ドキッとした。こんなにも近いのはきっとあの日の夜以来。
逸らせず固まっていると、匠馬が「澪」と手を伸ばしてきた。
「は、はい。なんでしょう」
「長期戦でいくと言ったくせに、俺は今焦れて仕方ない。あの男のことが忘れられないのだろうとばかり思っていたが、それも誤解だとわかった」
「え? 誤解ですか?」
何の話をされてるのかよくわからなかった。そんな澪に匠馬は続けた。
「あの日、俺が忘れたいといってもそう簡単には忘れられないよなと聞いた時、お前は頷いた。でも、金のことだったんだろ?」
「そうですけど」
目を丸くしたままあっさり答えた澪に、匠馬は愉快そうに声を上げて笑う。だが澪はキョトン顔のまま。まさか自分がそんな誤解をさせてしまっていたなんて、思いもしなかったのだ。