冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「事情はわかりました。なんとしても犯人を割り出して、捕まえます。そのスタッフの子には、こちらからコンタクトを取って、配置転換を提案しましょう」
「ありがとうございます」
匠馬の提案に支配人は深々と頭を下げた。大勢が巻き込まれ、心をすり減らしている。現場の生の声を聞いて、一刻も早い解決が必要だと澪も匠馬も感じていた。
一時間ほどで視察を終えると、車へと戻った。
「もうこれは弁護士だけでなく、警察にも入ってもらうしかないようだな」
匠馬は車に乗るなり、疲れた様子でハンドルにもたれた。
元々忙しい人なのに、最近はこの件も乗じ、休む暇もないから無理もない。心の通った仕事をモットーにしている匠馬だから、従業員が傷つくのは、心までも疲弊してしまうだろう。
「大丈夫ですか? 社長」
「あぁ、大丈夫だ」
「やはり近くにホテルをとるべきでしたね。配慮が至らずすみません」
「いや、断ったのは俺だ、気にするな」
トンボ帰りはやはり疲れるだろうと澪は宿泊のプランを提案していた。だが匠馬はなぜか断ってきたのだ。
「君が隣で寝ていると思うときっと自制できないと思ってね」
「え?」
「いや、なんでもない。飯は決まった?」
ハンドルにもたれたまま、にこりと微笑んで澪をみやる。