冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「あの時、澪を抱いたのは、気まぐれなんかじゃないってことは、わかってるよな?」
「そ……っ」
そうなんですか? と言いそうになり慌てて口をつむぐ。匠馬の気持ちをやっと察したのだ。
それを知ってしまったら、その台詞はあまりにも失礼だと思った。
「この件と、貸した金の件は俺が必ず決着をつける。だから上司ではなく、一人の男として見てほしい」
「社長……」
「澪、お前が好きだ」
ぐらっと視界が揺れたと思ったら、強引に抱きしめられた。
「公私ともに、傍にいてほしい。一緒に過ごして間もないが、それでも俺はお前しかいないと思ってる。お前の笑った顔がもっと見たい。心も体も、お前の一番近くに居たい。俺じゃダメか?」
まわされた腕にぎゅっと力がこもる。
この腕に初めて抱かれたとき、澪も匠馬でよかったと心から思った。匠馬の一番になれたらどんなにいいか、願わなかったといえば嘘になる。
澪もあの日から匠馬のことが特別になった。それは初めてだったからじゃない。心が匠馬を求めているとだと感じたのだ。
きっと匠馬なら、澪を大事にするだろう。一生守ってくれる。それに、こんなときだからこそ、匠馬を傍で支えたい。
でも、澪は頷くことができなかった。