冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「社長……」
「ん?」
「少し、考えさせてください」
今頷けば匠馬が喜んでくれるのはわかっていた。だが即答できない理由がある。
「……わかった」
「ありがとうございます」
「あまり気は長くないが、俺のことで頭がいっぱいになるならそれも悪くないな」
自嘲気味に言って澪の体を離すと、エンジンをかけ蕎麦屋へと向かった。澪はその横顔を複雑な思いで見ていた。
◇◇◇
その翌日。
澪は自宅のトイレで薬局で購入した妊娠検査薬を瞬きもせず見つめていた。
「嘘……」
窓の中には、くっきりと陽性のラインがでていた。
匠馬の子を、妊娠していたのだ……。