冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
◇◇◇
「妊娠、10週目に入ったところですね。どうされますか?」
40代中ごろの女医が、電子カルテを見ながら澪に尋ねる。
澪は午前中有休をとり、産婦人科を訪れていた。どうするかというのはつまり、産むかどうかということだろう。
問診表には未婚と記入した。きっと珍しいことではないのだろうが、あまりにも淡々としすぎていて、澪はついていけなかった。
「少し考えます」
「わかりました。あまり猶予はありませんので、決まりましたらご連絡をください」
猶予……その言い方にぞくっとした。もし産まない選択をしたら、この子は……。
無意識にお腹をさする。さっき初めてエコーに映った豆粒のような影を見せてもらって、目がじわりと潤み胸がときめくのを感じた。
自分の中にそんな感情があることに驚いたが、それはこの先揺るがないようにも思えた。澪は膝の上に乗せていた手をギュッと握り、口を開いた。
「あの、やっぱり産みます」
気づけば自然と口からこぼれていたのだ。同時に自分の声を耳にして、ホッと安堵する。