冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~
「そうですか。わかりました。では次回の検診は一か月後で」
「はい。ありがとうございました」
医師と看護師に見送られ、診察室をあとにする。
自分にこんな一面があることに驚く。だが恐らく、エコーを見せてもらった時点で、澪の覚悟は決まっていたのだ。例え一人で育てることになろうとも、この子だけは守る。
それに匠馬はあのとき、きちんと避妊をしていたように見えた。翌朝、空の四角いパッケージも捨ててあった。つまり、奇跡に近い確率で授かったということだ。
(絶対に産みたい)
来院した時の不安げだった顔は、いつしか凛々しい表情へと変貌していた。
その足で母子手帳をもらうと、澪は出社した。これをもらうと、途端に母になった気がするから不思議だ。安定期に入るまで、いろいろと気を付けなければと鼓舞する。
それより、匠馬にはなんと切りだそう。匠馬の気持ちは昨日初めて知った。まさかあんなふうに想ってくれているとは思いもしなかった。
やはりきちんとした場で話すのがいいだろう。今週あたり、時間をとってもらえるだろうか。そんなことを考えながら秘書課の扉を開いた。
「おはようございます」
「あ、おはよ。神谷さん」
一花が、明るい声で挨拶を返してくれた。
「半休をいただいてすみませんでした」