冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「そろそろ終わったかしら」

社長室の隣にある会議室が、途端に騒がしくなった。一花と共にそちらへ向かうと、ちょうど匠馬が出てくるところだった。

「社長」
「あぁ、神谷か。スケジュールに変更がでそうだ。今からいいか」
「はい」

匠馬に促され社長室へと入る。澪はタブレット片手に、プレジデントデスクの前に立った。匠馬は澪と共有しているスケジュールアプリに目を落とすと変更点や、追加する予定を読み上げた。

「では、早急にホテルと飛行機の手配をしておきます」
「あぁ、頼む、それと割烹料理の店をいくつかチョイスしておいてほしい。明後日、ネクストファーマと会食になった」
「明後日の20日、金曜日ですね。承知いたしました」

澪は20日に「会食」と打ち込む。会食となれば澪も同行が必要だ。だが匠馬が予期せぬことを口にした。

「その日は神谷はこなくていい」
「え? どうしてでしょう」

いつも当たり前に同行していた。こんなふうに断られるのが初めてで、つい動揺してしまった。

「今回は俺一人でいく」
「……わかりました」


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