冷徹弁護士の独占欲にママとベビーは抗えない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
反旗を翻(ひるがえ)して会社のひどい勤怠状況を証言してくれる馬場さんには、頭が上がらない。

でも彼は、当時上司から『辞めさせるぞ』と言われて口をつぐんだのが申し訳ないと、何度も謝ってくれた。


馬場さんのことを九条に託したあと、準備に入る。


「八木沢さん、今日はよろしくお願いします」

「もちろんです。きっちり真実をあきらかにします」


出廷予定の五十代後半の営業部部長に笑顔で話しかけられて答える。

正直、ひとり亡くなっているのに、この笑顔の理由がわからない。
そもそも残業の超過は認めているのだし。

彼は俺が過失相殺を勝ち取って、賠償金を少なくできると踏んでいるのだ。

社長からも『いくらで手を打てそうだ?』と、しつこいくらい尋ねられた。

しかし、賠償金云々の話ではない。
これは人の命の問題だ。


< 323 / 342 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop