陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 でもそんな俺でも流石にこのままじゃダメだってのは分かってた。

 だから、初めから決めてたんだ。


 美夜が16歳になったら――俺の全部を伝えて、美夜の全部をもらおうって。


 そうじゃないと、俺はきっと美夜がいても狂ってしまいそうになるから。

 求めて求めて、我慢して。

 そんなの、区切りをつけなきゃ耐え切れないと思ってたから……。


「美夜……」

 名前を呟きながらいい匂いのする髪に唇を埋める。


 この髪の毛一本ですら他の誰にも渡したくない。

 そう思っていることを伝えたら、流石に引かれるかもな。

 でも、紛れもない本心だから……。



 あと少し。


 美夜の16歳の誕生日まで、あとひと月ほどだ――。



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