陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく
 いやいや!

 それ以前に付き合ってるわけでもないのにそういう事はちょっと……。


「でも、心もって言ったよね……?」

 心もなら、ちゃんと言葉で伝えてくれるのかな?

 それなら、嬉しいんだけど。


 ……嬉しい、けど。

 あたしの心臓はちゃんと持つのかな?

 ……持たない気がする。


 下手をしたら好きだって言ってもらえた瞬間に動きを止めちゃうかもしれない。


「いやいやまさか」

 声に出してあり得ないと思ってみるけど、さっきみたいにドキドキバクバクしすぎちゃったらどうなるか分からない。

 さっきだって死んじゃいそうって思ったのに。


「……ちょっと、練習が必要……かも?」

 でも練習ってどうすれば……。

 陽呂くんに相談するしかないかな?


 こんなこと他の人には相談できないし。

 本人に相談ってのもおかしな話だけど、それしかないよね。


 そう判断したあたしは、とりあえず陽呂くんの家に行くために着替えることにした。

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