冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
「指輪の痕までちゃっかり確認するなんて、本当に仁って目敏(めざと)いわよね。あーあっ、上手くいくと思ってたのになぁ」
ざーんねんっ!とボヤく瑠璃子さん。
「職業柄、人や物を観察する癖があってな」
「職業柄?性格でしょ!あ〜ヤダヤダこんな男っ」
「なんだと?」
「ちさとチャンだっけ?まだ若いのに変なオジサンに捕まっちゃったわねぇ。ご愁傷様(ごしゅうしょうさま)」
瑠璃子さんの「こんな男」発言にピクリと反応した仁さんだったけど、更なる瑠璃子さんの言葉に絶句した模様。
わたしはと言うと…、
「…ぷっ。…ふふっ、あははははっ!」
可笑しくて可笑しくて暫く笑いが止まらなくて、仁さんと瑠璃子さんはその様を驚いて見ていて、光輝くんは「おねーたん!たのちいの?えがお、しゅきぃ!」と、ニコニコ顔でわたしに抱き着いてきた。
そんな光輝くんのことを笑顔で抱きしめたわたしを、瑠璃子さんとまり子さんは穏やかな笑顔で、仁さんはちょっと複雑そうな顔でわたしが笑い止むまで見守っていてくれた。
ーー
ーーーー
わたしがなんとか笑い止み、何となくお茶にしようってことでソファーに座って休んでいると仁さんが、
「笑止んで良かった。千聖が発狂したんじゃないかって冷や汗出た…」
「ふふっ、そんな発狂なんてしませんよ。ただ、なんとなく瑠璃子さんのこと好きになっただけです」
「あら嬉しい。こんな若くて可愛い女の子から好かれるなんてっ!ちさとチャン今度うちに遊びに来る?」
「え、いいんですかっ!?」
「いいわよぉ。光輝もこうしてちさとチャンに懐いているし」
「ちーたん!ちーたんちゅきぃ!」
「絶っっ対にダメだ!」
…こんな、こんな風にみんなで騒ぐのって初めてで、嬉しくて楽しくてわたしは笑いながら少しだけ、泣けた。