きみは溶けて、ここにいて【完】
玉ねぎの皮をむいて、切っていく。
とん、とん、と包丁の音。
遠くでは楽しそうにはしゃぐ声。
泣くほどのことではないけれど、すごく虚しかった。
別に、煮込むときに戻ってこなくてもいいよ、と思っている。強がりな気持ちを、勝手に傷つけられたこころを隠す絆創膏の代わりにしようとしている。
そんな時、俯いていた視界の隅に、誰かの靴の先があらわれて、思わず顔をあげる。
そこには、なぜか、森田君がいた。
「保志さん、他の人、なんでいないの?」
不可解そうに、私に尋ねる声。
どうして、ここにいるのだろう。
森田君は、久美ちゃんの班であるはずだ。
包丁を一度まな板において、「……頼まれたから、だよ」と答える。
すると、森田君は、不服そうな表情を浮かべて、「じゃあ、手伝うよ」と言った。