きみは溶けて、ここにいて【完】




 別に森田君は、真剣な顔で説教のようなことをしたわけではない。

ただ、彼は、笑って、事実を述べただけだ。



 浜本さんも吉岡さんも私に頼んだことなんて忘れたかのように、野菜を切っていくから、驚いてしまう。

すごいな、と思った。影響力のある人気者は、笑っているだけで望むような流れに持っていけるみたいだ。



「保志さん。俺の手伝うって、こういうことだよ」


 自分には到底できないけれど、きっと森田君にとっては些細なこと。


それに感動していたら、森田君は一言だけ私にそう言って、自分の班へと戻っていった。

ありがとう、は言えなかった。求めていないような気がしたから。



 その後も、浜本さんと吉岡さんは、元居た場所には戻らずにずっと手伝ってくれた。カレーが出来上がるころに鮫島君も炊けたお米をもって班に戻ってくる。



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