きみは溶けて、ここにいて【完】
9. 夕暮れの真実





 あれから、すぐに夏休みが始まった。

今年だけはそのことに本当に助けられた。他人を気にすることなく、気持ちの整理をする時間をもてたから。


影君からもらった手紙を入れた机の引き出しは、鍵をかけたまま、あけられずにいるけれど、少しずつ、少しずつ、夏の間に、もう影君が存在していないということを受け入れようとしていた。



 人が死ぬということを認めるのとは少し違うんだ。死体は焼かれ、灰は土や海に還る。

そういうものとは別で、影君の場合は、消滅、という言い方が正しいのだと思う。


詳しくは、分からない。

だけど、もう、影君は、いない。


死体にもならない。この宇宙のどこを探しても、存在しない。まるでエラーのようで、だけど、確かに人格には光が灯っていたんだ。

それが消えてしまった。



 森田君は、どうやって夏休みを過ごしているんだろう。どういう風に、影君の喪失を受け止めたんだろう。


教えてほしかった。

思い出になんて、
まだ、到底できるわけがないのだ。


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