相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
彼の母親も、奏弥さんを産んで、一週間後に亡くなった。
妊産婦の死亡率の中でも一番高い『羊水寒栓症』による合併症が原因だと訊いた。

だから、彼は写真の中でしか母の顔を知らない。

彼と和香ちゃんは同じ境遇。

「母さんが居ない分、兄貴や父さんが俺をとても可愛がってくれた…でも・・・そうやってかわいがられる度に、二人から母さんを奪ったって…何だか後ろめたさがあって…和香ちゃんも自分と同じコトを思うかもしれないと考えると…何だか辛い」

人前では笑顔を浮かべ、ムードメーカーで通ってる奏弥さん。

でも、時折見せる彼の暗い部分にキュンと胸が締まった。

「きっと…また…京弥さんは素敵な人だから…出逢いがあるかもしれませんよ…」


「・・・父さんにもその出逢いを求めたけど…結局、独身だぞ…きっと兄貴もそうなるよ」

そう言って、チキンを口に運んだ。

和香ちゃんはフォローアップをミルクを飲み終え、喃語で私達に何かを訴える。

「はいはい、遊びたいんでちゅか??」
私はベビーチェアから和香ちゃんを抱き上げて、プレイマットに下ろした。

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