相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
日勤をこなし、今夜はそのまま当直。
産婦人科医局に用事があり、奏弥さんが鉢合わせした。

「!?」

奏弥さんの頬には紫色の痣が出来ていた。

「奏弥さん…その痣…」

「あ・・・殴られたんだ…」

「誰に?」

「亡くなった室瀬一実さんのお父さんだ…娘と孫を返してくれと…一人娘だったらしい」
私は言葉に詰まった。
でも、奏弥さんは常にベスト尽くす人。
目の前の母子の命を必死に救おうとしたと思う。

「まぁ、取り乱していたんだろう…初孫の誕生を楽しみに待っていたんだ・・・」

「槇村先生…山崎さんの子宮口が全開です…」
看護師が奏弥さんを呼びに来た。

「直ぐに行きます…じゃ遥…俺はお産だから行くね」

「うん」
自身もキモチを押し殺し、産科医としてのスイッチを入れ、行ってしまった。
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