相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
俺の腕の中で二つの命を失ってしまった。

事故で搬送された人達の処置は終え、皆ICUに運び込まれて行った。

「すまない…槇村」
「不可能を可能に出来ませんでした。高木先生」

「…いや・・・最初から…」

俺と高木先生はICUの中の様子を見ながら話をした。
お互いに表情は暗いし、漂う空気は重い。

妻子と共に事故車に乗っていた夫は高木先生の処置のおかげで、命は助かった。

今は静かに麻酔で眠っている。

明日の朝、意識が回復したら、真っ先に妻子のコトを口にするだろう。

「自分だけが生き残ったコトを知れば…悲しむでしょうね…」

「・・・奥さんと赤ちゃんの死亡は俺がご主人に伝えるから…槇村…心配するな」

「しかし…」

俺は高木先生に反論する。

「…救命の責任者はこの俺だ…お前にオペを指示したのも…俺だ」

「いえ、自分が伝えます…」

「じゃ自分の顔を鏡で見ろっ。酷い顔だぞ…」

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