敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
私はなにも言葉を返せずに俯いた。

あのときの怪我は跡形もなく治っているのに、無意識のうちにその場所を掴んでしまう。

「この少しあとだったかしら。仁くんが『将来美玖ちゃんをお嫁さんにください』って私とお父さんにお願いしてきたのは」

母が父に視線を投げた。

「ああ、そうだったな」

うなずいた父に、私は耳を疑う。

仁くんが私をお嫁さんにください?

「『怪我なら気にしなくていいのよ。もうきれいに治ったからね』って言っても、『これからは僕が美玖ちゃんを守りたい』って退かなくてね」

「ああ。小学四年生くらいだったのに、一丁前に男の目をしていて驚いたな。いつも美玖を大事に想ってくれる仁くんならいいよと、父さんと母さんが内々に承諾したんだ」

父はそのときの仁くんを思い出して微笑んだ。

「私が生まれたとき、お父さんたちが私と仁くんを将来結婚させようって決めて、私たちは許嫁になったんじゃなかったの?」

そう口約束を交わしたと聞いていた。なのにまさか仁くんからの申し出だったなんて。

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