敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい

母の話によると、当時私と仁くんが近所の友だちと公園でバトミントンをしていたら、ある女の子がサーブを打ちながらラケットから手を離してしまい、それが私と仁くんのいる場所に飛んできたらしい。

そして、私がとっさに仁くんを庇い、ラケットが当たって怪我をしたらしかった。

「そういやそんなことあったね」

私は懐かしい気持ちになった。

あのとき仁くんは青ざめ、私に何度も謝った。

仁くんのせいじゃないし、彼に直撃せず私が小さな怪我で済んで幸運だったくらいにしか感じていなかったのに、ひどく心配されたのを思い出す。しばらく毎日傷痕をチェックされた。

「仁くん、美玖にだけじゃなく私にも何度も謝ってきてね。『ごめんなさい。僕のせいで美玖ちゃんが怪我した。傷跡が残ったらどうしよう』って目を潤ませるものだから、本当にかわいそうでね」

しみじみと語る母に、私は目を見張る。

「嘘、仁くんそんなに思い詰めてたの？」

「そうよ。仁くんは子どもの頃から誠実で、生真面目すぎるくらいだから」