敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
その頃の仁くんの気持ちに嘘はないだろう。昔の話とはいえうれしかった。

ただ私にはこの先も仁くんの気持ちをつなぎ止められる魅力がない。

母の言う通り、いい男になりすぎた仁くんを、私だけではきっと満足させられないだろう。彼は雪村さんと交際していたときと同様にまた浮気を繰り返すはずだ。もてる仁くんがたくさんの女性と付き合いたいと願うのは自然なことだから、たとえそれが不誠実でも私は彼を責められない。

でも、私は仁くんの裏切りに耐えられない。

だからその前に、私は……。

「美玖、どうしたの?」

涙をこらえる私に、母は声をひそめた。

一度でも仁くんと結婚すれば両親は納得する、三カ月後に離婚したって問題はないなんて浅はかな考えだった。

私と仁くんを一番近くで見守ってくれていた両親が、離婚を悲しまないはずがない。

お試しで結婚なんてするんじゃなかった。

「ごめんね、お父さんお母さん……。私と仁くん、離婚になるかもしれない……」

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