敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
「美玖、そうしなさい。仁くんときちんと話して、それでもどうしても離婚の選択しかないのなら、それはそれでしかたがないわ。ただ逃げるのだけはだめよ」 

両親は仁くんと向き合いなさいと私を促した。

「美玖、帰るぞ」

掴まれた腕を引かれ、立たされる。

私はそのまま仁くんに連行されるように家を出た。

門扉の前には仁くんが乗ってきたのであろうタクシーが停まっている。

母が貴重品の入った私のバッグを手渡してくれ、両親に見守られながら乗り込んだ。タクシーはマンションに向かって走り出す。

仁くんの手は私の腕を掴んだままだ。

「仁くん、車で来なかったんだね……?」

いつも自分で運転している仁くんがタクシーで来たのが意外だった。

「あんな置き手紙を見て、冷静に運転できる気がしなかった」

低く響いた声に私は目を丸くして、隣に座っている仁くんを見つめる。

仁くんは切迫した表情をして、湧き上がる激情を必死に押し殺しているようだった。

「心配かけてごめんね……。私の気持ち、帰ったらちゃんと話すから……手、離して?」

拘束されたままなのは居心地が悪かった。

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