敏腕CEOは執愛で契約妻の初めてを暴きたい
そうこうしているうちに映画が始まる。

映画のドキドキと、仁くんへのドキドキが入り交じり、心臓がどうにかなりそうだった。


「しかしあれだな。包丁一本かまえて追いかけられるだけの話がベタに恐ろしいな」

「うん。エレベーターが開く瞬間に悪い予感がして、主人公が閉ボタンを連打するところあったでしょ? それで、ガッ! って手が入ってくるとこ! あそこが一番怖かった!」

レストランモール内の地中海ダイニングで少し遅めのランチをしながら映画の感想を言い合った。

基本的に仁くんといると気張らずにいられるし、なんでも楽しいし、なんでもおいしい。

ジャスミンライスのリゾットを口に運びながら、私は顔をほころばせる。

「あそこな。俺は美玖に手を握り潰されるかと思ったよ」

「んっ!」

仁くんが不意打ちでそれに触れてくるから、私は噎せそうになった。

せっかく映画のおかげで忘れていたのに。

「大丈夫か?」

ナプキンに手を伸ばす私を、仁くんは正面から見つめてニヤニヤしている。

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