優しい幽霊さん
「カラオケなんて来たことないよ!」

「大丈夫!楽しいところだから!」

ミリさんに教えられながら受付をし、個室へと案内される。天井にはミラーボールがあって、大きな鏡がある。派手な装飾が施され、僕が固まっている間に、ミリさんはマイクを持って曲を入れ始めた。

「君も一緒に歌おう!」

マイクを手渡され、「えっ?えっ?」と戸惑っている間に曲が始まる。しかもデュエット曲。人と歌うなんてしたことがなくて恥ずかしい。でも、ミリさんが楽しそうに歌っているから、まあいっかって思って歌った。

カラオケをした後は、ミリさんが「よく友達と行ったんだよね〜」と言ったアイスクリーム屋さんやドーナツ屋さんに案内される。幽霊のミリさんは食べられないんだけど……。

アイスクリームを買った後、僕はミリさんの言葉に疑問を持っていることをぶつけてみる。

「ねえ、ミリさんってこの街に住んでたの?」

「うん、そうだよ」

そう笑うミリさんは少し寂しそうで、僕の胸が騒つく。だって、数時間過ごしただけでわかったから。彼女が僕とは違う、必要とされる側の人だってことに……。
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