お飾りにしか⋅⋅⋅なれない

···生田 奏悟


隣の立花デパートが経営難で
門田不動産が買い取った
と耳に入った。

どうやら、立花デパートの
一人娘と門田不動産の息子の
政略結婚で締結したと⋅⋅⋅⋅⋅⋅

今時でも、そんな事があるのかと
思っていたが⋅⋅⋅⋅⋅⋅

また、しばらくすると
経営者が代わり
立花デパートの解体建築工事が
始まった。

工事前には、業者と立花デパートの
立花社長と新たな副社長である
女性の方が挨拶に見えた。

現在社長は不在の為と説明をされて
「代理で申し訳ありません。」
と、言う彼女、原田史織さんは、
不安で一杯の顔をしていたので
「わざわざ、ありがとうございます。
何かありましたら、
いつでも言って下さい。
ご協力致しますので。」
と、伝えると
立花社長は、
「ありがとうございます。
   宜しくお願い致します。」
と、頭を下げると
彼女も一緒に頭を下げた。

三人が立ち去る時に
「あっ、原田さん
当ホテルのカフェも人気があるのですよ。
是非、お越しください。」
と、カフェの無料券を渡すと

彼女は、真っ赤になりながら
「⋅⋅⋅⋅ありがとう····ございます·····。」
と、再度頭を下げてから
立花社長の後を追った。

初めは、それしか思ってなかったが
少しすると彼女をカフェで
見かけた。

窓から外を見ていたが
彼女の瞳から光るものが落ちた。

何か辛い事でもあるのだろうか?
苦しいものがあるのか?
悲しいものがあるのか?
と、思うと

彼女・原田さんに声をかけていて
彼女は、びっくりして顔を上げた。

そんな彼女の涙をそっと拭くと
彼女は、尚も驚き
「いきなり、失礼しました。」
と、言うと
彼女は、首をふりながら
「⋅⋅⋅⋅ありが⋅⋅⋅とう⋅⋅⋅ござい⋅⋅⋅ますっ。」
と、言った。

「私も経営者です。
ホテルとデパートでは
違うかもしれませんが
何か不安な事でも
ありましたら、話してみませんか?」
と、伝えると
彼女は、びっくりした顔をしてから
涙をポロポロとこぼし

彼女の主人である
紗雪さんと言う女性の事

門田不動産での生活から
安藤先生という方が
救ってくれた事

その先生から
副社長をやるように言われた事

だが、自分にはそんな力がない事

でも紗雪様の為に
頑張らないと行けないのだと
必死に話す彼女が
たまらなく愛しく思えた。

「原田さんが、
紗雪さんと言う方を
大切に思っているように
紗雪さんも 
きっと同じ思いだと思います。
そんなあなたが、そんな辛い思いを
していると知ったら
辛いと思いますよ。

だから、もっと力を抜いて
回りの方をもっと頼って良いのでは?
私も、いつでもあなた、原田さんの
お力になりたいと思っています。」
と、話し自分のプライベートの
番号を教えた。

彼女、原田さんから
連絡来ることはなかったが
彼女は、何度かカフェに
来てくれていたみたいで
カフェのスタッフが
気にかけて俺に教えてくれた。
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