年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
昨日と同じように愛莉ちゃんに着付けをしてもらう。着物を着ると背筋が伸び、朝が早いことなどすっかり忘れるくらいシャンとした気持ちになった。

先に手早く賄いの朝食をいただいて鋭気を養ってから、朝食会場の前でお客様をお出迎えする。

「おはようございます。お席にご案内致します」

昨晩の宴会を経験しただけあって今朝はスムーズにお客様を誘導することができ、ご飯やお味噌汁もそつなく配膳することができた。

あんなにギリギリまで寝ていた潤くんも、一度作務衣を羽織れば仕事モードにスイッチが入るようだ。

凛々しく働く姿やインカムから聞こえてくる的確な指示、労いの言葉は私たちスタッフをぐんぐんと引っ張っていく。

頼もしい、この人が旦那さんになるんだと思うと私の身も引き締まった。

朝食の片付けをし、そのまま昼と夜の宴席の準備までが一連の流れだ。本来女将は事務仕事をしながらお客様のお見送りに顔を出し、次のお客様がいらっしゃるまでは裏方の仕事をするそうだけど、私は一日体験なのでそういった細々とした仕事は省かれ配膳が主な仕事だ。

愛莉ちゃんは住み込みで働いているので配膳以外にも仕事を任されているけど、今回は私の教育担当として同じ仕事をしてくれている。

「少し休憩したら、お帰りのお客様をお見送りしましょう」

愛莉ちゃんの指示でようやく座ることができた。

「はあー、しんどい」

「ですね。結構体力仕事だと思います」

「おもてなしするって大変ね」

「そうですね。でもお客さんが笑顔になると嬉しくなりません?」

愛莉ちゃんのキラキラとした笑顔は本当にこの旅館業が好きなんだなあと思わせて、優しい気持ちに溢れていた。
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