君の言葉で話したい。
9話 紫涵
蒼太と別れた後、
鈴にとって辛いことが続いた。

仲の良かった紫涵が、
突然アルバイトを辞めると言う。
鈴にとっては働きやすい環境だったため、
理由を尋ねた。

「よく言えるね。」
紫涵は恨みがましい目で、
鈴を見た。
「傷心中なの。雨泽に好きだと伝えたら」
紫涵は良い人だけど
相原さんが好きなんだと、
言われたと続けた。
「八つ当たりのことは、
わかっている。
でも今の状態で、
貴方と働くのは、
疲れる。」
彼女はそれだけ告げると、
以降、鈴に話しかけてくることはなく、
喫茶店を去った。
雨泽は私の全てだったと、
マスターに漏らしていたと、
人伝に書いた。
その言葉が脳裏に焼き付いて、
離れなかった。

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