俺がお前を夢の舞台へ
**
指の震えが止まらない。
けたたましいサイレンが小さくなっていく。
赤いランプが点滅する白い箱が遠ざかっていく。
無力だった。
何もできなかった。
「彩絢…」
茉優が背中をさすってくれるけど、なんの気休めにもならなかった。
茉優はすぐに先生を呼びに行ってくれた。
勇翔は救急車を呼んで状況を説明してくれた。
私は…何もできなかった。
意識を失った蒼空の前で泣くことしかできなかった。
「…蒼空は何の病気なの」
あんなの、おかしい。
蒼空が野球を辞めた理由が見えた気がした。
「勇翔は知ってるんでしょ」
蒼空が突然苦しみだしたのに、驚いた様子はなかった。
勇翔は知ってたんだ。