俺がお前を夢の舞台へ
「…藤井、悪いけどコイツ借りていい?」


一瞬の沈黙の後、勇翔はそう言って私に目配せをした。


「あ…うん。じゃあ…またね…彩絢」


控えめに手を振り、茉優がグラウンドから出ていく。


ポツン…と取り残された私たちは、まるで世界から切り離されたようだった。


勇翔は、淡々とボールとバットを拾い上げている。


「…そのバット……」


「…アイツのバット」


やっぱり蒼空が愛用していたバットだ。


「…なんで勇翔が」


よりによって、犬猿の仲だった勇翔がどうして。


「蒼空は…心臓病を患ってる」


突然言葉を投げつけられ、ガツンと殴られた気分だった。


「心臓病…」


心臓病って何……?


「蒼空はどうなるの…?」
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