鵠ノ夜[中]



そんな彼女と三嶋さんがよく一緒にいるのを見かける。

……というか、クールな三嶋さんが前川さん以外と話しているのをほとんど見たことがない。



「まあ、多少は。

……茲葉くん、もしかしてあの子のこと好きなの?」



え? ……好き?



「ち、ちがうよー!なんでそんな勘違いしてるの!?」



「だってさっきも姉がいるのかって聞いてたし。

……普通、好きじゃない子のことそんなに気になる?」



「これにはワケがあるの! ぼくすきなひといるし!」



聞きたいことがあって三嶋さんに声を掛けたのに、なぜかぼくが圧倒されている。

勢いあまって言い返せば、彼女は珍しく「そっか」とぼくに微笑み返す。どうしてだろう。特に似ているわけでもないのに、その姿がレイちゃんと重なって見えた。




「で、何だっけ」



「っ、そうそう。

前川さんと仲良いから、もしかして前川さんのお姉ちゃんのことも何か知ってたりするんじゃないかと思って」



「まあ確かに、存在は知ってるけど。

仲良いって言っても、別に放課後とか休日に遊んだりするような仲じゃないし。残念だけど、ふたつ年上の姉がいるってことしか」



そっか。確かに、三嶋さんが休日に集まって誰かと遊びに行ってるようなイメージもないし。これ以上の収穫はなさそうだ。

三嶋さんがぼくを促すようにゆっくり歩きだすから、ふたりで昇降口へと向かう。



「ところで茲葉くん、もしかしてその"お姉ちゃん"のことが好きだったりする?」



「しないよ!?」



なんかずっと勘違いされてる……!



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