鵠ノ夜[中]
いつものように高校組よりも先に家に着き、別邸で昨日の残りのドーナツを頬張っていたら、みんなが帰ってきた。
レイちゃんも一緒にいて、白いシャツのまぶしさに目を細めながら、ぼくはとあることを疑問に思う。
「ただいま、芙夏」
「おかえりー。ねえレイちゃん。
……高校の制服って、男女ともにその色だったっけ?」
「ええ、そうだけどどうかしたの?」
エンブレムが胸元で輝くグレーのブレザー。
女子のリボン、スカート、男子のネクタイ、スラックスは、いずれも。
「……緑色って、なんだ?」
統一された青色で、ぼくは頭にハテナを浮かべる。
だって三嶋さんは、間違いなく、グレーに緑の制服と言ったはずだ。
「緑色?」
「うん。あのねー、ぼくのクラスの女の子で。
レイちゃんたちの通ってる学校の制服が、グレーに緑って言ってたから」
「ああ、学年で色が違うからじゃないかしら。
3年生は赤で2年生が緑よ。ローテーションしてるから、芙夏がもし入学したら赤色になるわね」
……うん?
つまり彼女は、いまの2年生の制服のカラーをぼくに伝えたってこと?自分が入学することになったって、三嶋さんが"グレーに緑"の制服を着ることは無いのに?
前川さんの繋がりで知ってるのかとも思ったけど、ふたりは放課後遊んだりする仲では無い。
ということは、お姉さんの制服を彼女が知ってる可能性は低いと思う。……だとすれば。
「レイちゃん……ちょっと気になることがあって」
"勘違い"なら、それでいい。
偶然知ってた可能性だって、当たり前にある。……でも。でも、なぜか、すごく気になってしまった。