聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「うっ、頭いたっ」

 記憶がないことを深く考えるのをやめて、玲奈は引き出しをあさって鎮痛剤を探す。この頭痛じゃとても会社に行けない。

 コーディネートを考える必要のないシンプルなシャツワンピースにジャケットをはおる。長い髪はすっきりとひとつにまとめ、薄化粧をほどこす。その間に薬が効いてくれて、玲奈はなんとか出社できるコンディションを整えた。

「行ってきます」

 誰もいない部屋に小さく告げて、玲奈は部屋を出る。と、そのとき、いつもの場所に鍵がないことに気がついた。昨日のバッグのなかにも、着ていたコートのポケットにもない。昨夜、部屋に入れているのだから失くしたわけではないはず。冷静にそう考えた玲奈はもしやと思い、玄関ドアの簡易ポストを開けてみた。なかに入っている革のキーケースを認めて、玲奈はほっと安堵する。そして、ふいに記憶の断片を取り戻した。

(そうだった。昨夜は副社長にタクシーを呼んでもらって……もしかして送ってくれたのかな)

 玲奈がポストに鍵を入れるとは思えないし、その可能性が高そうだ。出社したらすぐに彼に謝罪しなければ。
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