聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
「結婚するのなら、子どもができていても問題はないだろう? どうして君はそんなにかたくななんだ?」

 子ども。その単語が玲奈の胸に重くのしかかる。口のなかに苦いものが広がっていく。

「父親が俺なのが不満か? あの求婚はやはりただの戯言だったのか」

 十弥の瞳が切なく揺れた。玲奈はふるふると首を横にする。

「副社長のせいではありません。相手が誰でも……私には子どもを育てることなんてできないんです」 

 唇をわななかせて、絞り出すように彼女は言った。十弥は目を見開く。

「どういう意味だ?」

 十弥とは知り合って日も浅い。友人でも恋人でもないただの上司だ。それなのに、どうしてか彼にはなんでも話せてしまう気がする。
 これまで誰にも話したことのなかった過去を、ぽつり、ぽつりと玲奈は口にする。

「私、親に愛されたことがなくて……だから自分の子どもを愛してあげられる自信がないんです」

 玲奈は母子家庭で育った。父親は玲奈が二歳のときに愛人と駆け落ちしたので、彼女には父親の記憶はまったくない。母親は大手製薬会社の研究職で高給取りだったので、経済的には何不自由なく育ててもらった。

「それには感謝しています。和泉商事のような立派な企業に就職できたのも母のおかげですから。でも……母にとって私はいらない子だった」
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