聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 それから二日後の土曜日。佐和に電話をしてみようかと思いつつも、勇気が出ずにグズグズしていた玲奈のスマホが鳴った。画面を見ると、なんと佐和だった。

 心なしか弾んだ声で玲奈は電話に出る。

「もしもし。お母さん?」

 向こうからかけてきたというのに、なんの反応もない。電波の悪い場所にでもいるのだろうかと首をかしげながら、玲奈はもう一度呼びかけた。

「お母さん。聞こえてる?」
『――玲奈』

 くぐもったように掠れた声が玲奈の耳に届いた。佐和が玲奈と名前を呼ぶのはめずらしい。驚きながらも玲奈は言葉を続けた。

「どうかしたの?」

 佐和の声の調子が尋常ではないなにかを感じさせた。しばしの沈黙のあとで佐和は意を決したように重い口を開いた。

『あの人が死んだの』
「あの人……って」

 すぐにはピンとこなかった。それほどまでに玲奈には遠い存在だったからだ。

『あなたの父親。末期の胃がんだったそうよ』
「えっ……」

 唐突な話すぎて、驚くとか悲しいとかそういう感情はわかない。遠い親戚の話でも聞いているかのようだ。

「どうやって知ったの?」

 最初に浮かんだ疑問はそれだった。佐和が父親と連絡を取っているなんて話は聞いたことがなかったし、音信不通なのだと玲奈は思っていた。
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