聖夜に身ごもったら、冷徹御曹司が溺甘な旦那様になりました
 電話を終えると、心配そうな顔をした十弥がすぐに聞いてきた。

「お母さんか。ずいぶん深刻そうだったけどなにかあったのか?」

 玲奈は十弥に事情を説明した。父親は今の奥さんの実家がある北関東のとある県で暮らしていたらしい、通夜の会場もそちらになる。電車で二時間もあれば着くから今から準備をすれば十分間に合うはずだ。

「わかった。俺も一緒に行く」
「ううん。ひとりで大丈夫――」

 そこまで言って玲奈は言葉を止めた。思い直すと、じっと十弥の目を見て言った。

「ありがとう。一緒に来てくれる?」
「もちろんだ」

 その心強い言葉に、玲奈はほっと表情をゆるめた。

(私はお母さんとは違う、甘えさせてくれる人がいる。その幸運に感謝しよう)

 急いで支度を済ませると、ふたりは昼過ぎ発の特急電車に乗った。最寄り駅から通夜会場
までは路線バスが出ていた。車社会だからか、乗客はほとんどいない。バスは静かに走り出した。
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