Diary ~あなたに会いたい~
「ううん。びっくりした。恭介がそんなこと
言うなんて。もしかして、何かあったの?」
くす、と白い歯を見せて尚美が訊く。
俺は両手で顔を覆うと、いや、別に、と、
首を振った。
「ふうん」
納得していないような含み笑いをして、小首
を傾げていた尚美は、突然思い出したように
そうえいえば、と顔を曇らせた。
「やっぱり、あなたに決まったわ、福岡。
新しい部署を上手くまとめられるのはあなた
しかいないって、あの人、期待してた。ごめん
なさい……伝えるのが遅くなって」
「ああ、決まったのか。そういえばそんな話、
あったんだよな。すっかり忘れてた」
はは、と乾いた声で笑いながら身体を起こす
と、俺はソファーから立ち上がった。
部屋の中央に置かれたガラスのローテーブル
を避けて進むと、キッチンのカウンターに置か
れた写真に手を伸ばす。フォトフレームの表面
を覆うガラスには1本の大きな亀裂が走っていて、
その向こうで肩を寄せ、幸せそうに笑う二人は
少し年の離れた夫婦のようにも見える。
俺はガラスの亀裂をそっと指でなぞると、
細く息を吐いた。
「寂しくなるわね、あなたがいなくなると。
って言っても、私はこのまま辞めるつもり
だから、どっちにしろ、もう一緒に仕事は
できないんだけど。……聞いてる?恭介」
「ん?ああ、そっか。そうだな……」
写真を眺めながら、ふと、ゆづるのことを考え
ていた俺は、意識の向こうから話しかけていた
尚美を振り返って苦笑いした。
もちろん、話のほとんどは耳に入っていない。
「ねぇ、どうしたの?まさかこの話、断る
わけじゃないでしょう?」
尚美が心配そうに眉を顰める。
俺は、まあね、と笑って茶を濁した。
言うなんて。もしかして、何かあったの?」
くす、と白い歯を見せて尚美が訊く。
俺は両手で顔を覆うと、いや、別に、と、
首を振った。
「ふうん」
納得していないような含み笑いをして、小首
を傾げていた尚美は、突然思い出したように
そうえいえば、と顔を曇らせた。
「やっぱり、あなたに決まったわ、福岡。
新しい部署を上手くまとめられるのはあなた
しかいないって、あの人、期待してた。ごめん
なさい……伝えるのが遅くなって」
「ああ、決まったのか。そういえばそんな話、
あったんだよな。すっかり忘れてた」
はは、と乾いた声で笑いながら身体を起こす
と、俺はソファーから立ち上がった。
部屋の中央に置かれたガラスのローテーブル
を避けて進むと、キッチンのカウンターに置か
れた写真に手を伸ばす。フォトフレームの表面
を覆うガラスには1本の大きな亀裂が走っていて、
その向こうで肩を寄せ、幸せそうに笑う二人は
少し年の離れた夫婦のようにも見える。
俺はガラスの亀裂をそっと指でなぞると、
細く息を吐いた。
「寂しくなるわね、あなたがいなくなると。
って言っても、私はこのまま辞めるつもり
だから、どっちにしろ、もう一緒に仕事は
できないんだけど。……聞いてる?恭介」
「ん?ああ、そっか。そうだな……」
写真を眺めながら、ふと、ゆづるのことを考え
ていた俺は、意識の向こうから話しかけていた
尚美を振り返って苦笑いした。
もちろん、話のほとんどは耳に入っていない。
「ねぇ、どうしたの?まさかこの話、断る
わけじゃないでしょう?」
尚美が心配そうに眉を顰める。
俺は、まあね、と笑って茶を濁した。