西岡三兄弟の異常な執着
一番奥の大きな一人掛けのソファに黄河が座り、その前の二人掛けのカウチソファに朱雀が花苗の腰を抱いて座り、その向かいの二人掛けのソファに真白が座った。

「こちらが、我が西岡家の当主でご長男の黄河様。
こちらが次男の朱雀様。
そして朱雀様の奥様の花苗様。
こちらが三男の真白様です。
皆さん方使用人は、けっして名前をお呼びにならないようにお願いします。
黄河様はご主人様。
朱雀様は若様。
真白様は坊ちゃまとお呼びください。
そして━━━━━」

「あの…」
水樹達の中の一人が静かに口を挟んだ。
「はい、塩見(しおみ)さん何でしょうか?」
「面接は?」
「は?」
「今のお話聞いてると、私達は採用ということですか?」
それは水樹達の誰もが思ったことだ。
これは面接というより紹介だ。
もう既に水樹達は、ここで働くことが決まっているかのような……

「お前さぁ…」
「え?」
まるで王様のようにソファにもたれ足を組んだ黄河が、塩見を真っ直ぐ見据えて言った。
「バカなの?」
「は?」
「この俺様が、働くかもわからない奴と会うと思う?」
「え?」
「そんな暇じゃねぇんだよ!?」

「それにさ!」
そこに朱雀が口を挟んだ。
「え?」
「君等レベルが、僕達とまともに話せると思わないでね?」
「え……」
塩見は、放心状態だ。

「なにその顔……キモッ!!」
そして真白が、塩見を見て呟いた。

水樹達は、呆気にとられていた。
あの美しき三兄弟は、どこにいったのだろう。

テレビに出たことのある程の有名な三兄弟。
テレビの中では、穏やかで爽やかな青年達だ。

でも目の前の三兄弟は、まるで別人のようだった。

< 5 / 93 >

この作品をシェア

pagetop