天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
『これで少しは心強いだろ? あと、目ぇつぶっとけ。下を見るから怖いんだ』
『わ、わかった』
言われるがままに目を閉じると、繋いだ勇悟の手の温度が自分よりずいぶんと高いことに気づく。
男の子の手って、温かいんだ。そんなことを思っていると、不思議と恐怖がやわらいだ。
『あれ? なんで絢美、目をつぶってるの? それに勇悟と手なんか繋いで……』
『高い所、ダメだったらしい。この手は絢美がベソかきそうになってたから、仕方なくな』
いかにも迷惑そうな口調で聡悟くんに説明する勇悟にムッとしながらも、手を離されてしまったら心細いので、私は地上に着くまで黙って勇悟の手を握っていた。
『あの……ありがとう、勇悟くん』
観覧車を下りてすぐ、勇悟にお礼を言った。そして手を離そうとしたら、彼はますます手を握る力を強くして、ニッと笑う。
『勇悟でいいよ。友達もみんなそうだし。あと、お前チビで見失いそうだから、このまま俺の手につかまっとけ』
『う、うん。わかった』
口調は乱暴だけれど、根は優しくて面倒見がいい人みたい。
勇悟のそんな一面を知ったあの時、胸の中がほんのり桜色に染まったような、そんな感覚がしたっけ。