天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

「きっと、勇悟は覚えていないんだろうな……」

 ため息とともにそう呟いた私は、写真立てをそっと伏せて机に置く。

 聡悟くんのプロポーズを受けるとしたら、勇悟のことはいい加減吹っ切らないと、ふたりに対して失礼だ。でも、たったの一週間でそんなことできるのだろうか。

 タイムリミットを意識すると不安や焦りが一気に胸に押し寄せてきて、私は気持ちを切り替えるため、着替えを持ってバスルームに向かった。


 翌日は月曜日なので出勤だった。私の勤務先は、新横浜の高層ビル内に本社を構える父の会社・佳味百花だ。

 佳味百花は、神奈川県内を中心とした駅ビルやショッピングモール、元町ショッピングストリートなどに店を展開し、国内のみならず、世界各国の食材の中からバイヤーが厳選した調味料や飲料、菓子、紅茶、ジャムなど、様々な商品を取りそろえている。

 ただ陳列棚を見ているだけでもワクワクするので、目的がなくてもつい立ち寄って、気が付けばなにかを買っている、そんな店だ。

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