天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
勇悟の口から確かな言葉を受け取り、私の胸が歓喜に震えた。私を悩ませていたもうひとりの勇悟の姿が、徐々に輪郭を失い、薄く消えていく。
《絢美?》
感極まって涙を浮かべたままなにも言えずにいると、勇悟が心配そうに私の名を呼ぶ。
私は慌てて洟を啜り、素直な気持ちを口にする。
「ごめんね、うれしくて……。子どもの頃からずっと、片想いだと思ってたから」
《謝らなくちゃいけないのは俺の方だ。昔からずいぶん、お前を傷つけてきたよな》
私はスマホを耳にあてたままふるふると首を横に振る。
「ううん、そんなのいい。ねえ、会えないかな、今度。できれば……バレンタインの頃に」
高校生の時、手作りチョコをもって勇悟の家を訪れ、告白するつもりでいた。
けれど、私がハッキリしないせいで勇悟を怒らせてしまい、苦いファーストキスをお見舞いされた記憶がある。それ以来、私は彼にチョコを贈っていない。
だからこそ、ようやく気持ちが通じ合えた今、お互いに後悔が残るバレンタインを、幸せな記憶で塗り替えたい。勇悟の顔を見て、今度こそちゃんと好きだと伝えたい。
「もちろん。後でシフトを確認して連絡する」
勇悟も私の想いを汲んでくれたようで、快諾してくれる。
ホッとして息をつくと、今まで鳴りを潜めていたつわりの症状が、突然私を襲う。