天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
本当にバイヤーになれるかどうかは別として、興味のある分野のことだもの、勉強して絶対に損はない。むしろ、このまま心を腐らせて時間を無駄にするより、ずっといい。
私は目が覚めるような思いがして、勇悟に微笑みかける。
『勇悟、それ、すごくいい。やってみる』
『ああ、陰ながら応援してる。……ところで、結婚の方もなんか悩んでんのか?』
レンゲを手にした私がようやくお粥を口に運んでいると、勇悟が言いにくそうに切りだし、思わずどきりとした。
聡悟くんを含め子どもの頃からの許嫁とはいえ、実際はただの幼馴染のような関係なので、改めて結婚という単語が飛び出すと、急に気まずい空気になる。
私だけが勇悟に片想いしている状況だから、なおさらだ。
『あ、うん……。そっちは、別にいいかな。こうして勇悟に仕事の話聞いてもらっただけで、だいぶ心が軽くなったから、気にしないで』
『ふうん。ま、俺は絢美の好きにすればいいと思うけどな』
勇悟の言い方が他人事だったので、私は少し傷ついた。
今思えば、あの時すでに勇悟には留学の目標があって、私と結婚する意思がまったくなかったからかもしれない。