天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

「おはようございます。あの、どうしたんですか?」
「ああ、おはよう絢美ちゃん。そしておめでとう。イケメンドクターとのご結婚」

 のっそり顔を上げ、ワンレンボブの髪をかき上げながらそう口にしたのは、四十代の女性上司、柿田(かきた)部長だ。

 半年前にマンションを購入し、今月に入ってからは猫を飼い始め、自由な独身生活を謳歌している。

「貴船総合病院の次期院長って、こんなにイケメンだったんですね。おめでたいけど、寂しいです。絢美さんが異動する春を待たずに、フルーツ三姉妹も解散か……」

 続けて顔を上げたのは、お団子ヘアと黒ぶち眼鏡がトレードマークの桃瀬(ももせ)さん。

 私よりふたつ後輩で、一年前までギャンブル癖のある彼氏と付き合っていたのだが、私と柿田さんのアドバイスでなんとか別れを決断してからは、自分磨きのためにダイエットやメイクの研究をしている。

 全員フリーの私たちは仕事の後で食事に行ったりすることも多く、姉妹のように仲がいいので、柿田・梨木・桃瀬のフルーツ三姉妹と、他部署の社員たちから親しみを込めて呼ばれている。

 ……でも、解散って?

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