天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
魂が抜けたようなふたりの様子に首を傾げていると、ふと桃瀬さんがデスクの上に広げている雑誌に目が留まる。
開いたページには白衣姿の男性の写真が載っていて、それを認識したのと同時に私の胸は高鳴り、思わず桃瀬さんのデスクに駆け寄った。
「これ……」
コバルトブルーのスクラブに白衣を羽織り、片手をポケットに入れてはにかんだように笑っているのは、紛れもなくカナダにいる私の想い人、貴船勇吾だった。
見出しには【海外で活躍するイケメンドクター】とあり、彼の簡単な経歴やインタビューが掲載されている。思わず雑誌の発行日を確認すると、二カ月ほど前の日付になっていた。
「この雑誌、絢美さんが来る直前に梨木社長が置いていったんです。『ようやく娘が結婚する気になってくれたぞ。婿になる男は貴船総合病院の次期院長で、これは本人ではなく双子の弟だが、同じ顔だから参考にしてくれ』って、とても上機嫌でした」
ああ……母が父にプロポーズの件を漏らしたんだ。そして、父が職場に。我が両親ながら、なんて口が軽いの。
私はまだ、聡悟くんとの結婚を決断したわけじゃないのに。