天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
「絢美ちゃんは社長令嬢だから、いつかはこういう縁談があるんだろうと覚悟はしていたけどね。実際に聞くと、やっぱり寂しいわ。そして同時に、とっくに消えたはずの結婚願望がむくむくと……」
柿田さんがなにかを掴みたそうに空中に手を伸ばし、椅子から立ち上がる。桃瀬さんもそんな彼女にうんうんと頷き、ふたりは手を取り合った。
「わかります~柿田さん。私も、あんなパチンカスでも繋ぎ止めておけば結婚できたのかなぁとか、不毛なこと思っちゃいます」
「いやいや、桃瀬ちゃんはいいのよ、まだ若いんだから」
「このご時世、年齢は関係ありませんよ。一緒に頑張りましょう、柿田さん!」
「桃瀬ちゃん……」
私はすっかりふたりの世界に入ってしまった柿桃コンビからそうっと離れ、ちゃっかり拝借した雑誌を自分のデスクで広げる。
カッコよくなったな、勇悟……。最後に会ったのはいつだったかな。勇悟がカナダに行ってしまう前日に、聡悟くんと三人で壮行会をした時かな。
私は勇悟の写真を指先でそっとなぞりながら、過去に思いを馳せる。