天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
最初は、お洒落なバーの個室でただ食事とワインを楽しんでいた。
けれど、勇悟が日本から遠く離れたカナダに行ってしまうという現実が次第に私の胸を苦しめていき、ふたりが制止するのも構わず、私はハイペースでワインを空けた。
やがて泥酔した私は個室のソファで眠り込み、気が付いたら勇悟はいなかった。搭乗予定の飛行機が朝早いからと、ひとりで先に帰ったらしい。
ああ、勇悟は本当に私のことなんてどうでもいいんだなと、聡悟くんに介抱されながら実感した。
カナダに渡ってからも一度も連絡はなく、時々聡悟くんの口から、留学生活は順調で、向こうでオペばかりしているらしいというような話を聞くだけだった。
それなのに、私の胸の中から勇悟は出ていってくれない。私の恋心は彼と離れたあの日に凍りついて、どんなに月日が経っても勇悟への想いを新鮮なまま保存しているみたいだ。
思わずため息をついて、雑誌を閉じる。ちょうど柿田さんと桃瀬さんも寸劇を終え自席に戻るところだったので、頭を仕事モードに切り替え、パソコンに向かった。