天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~
十二月中旬の土曜、午後六時。私は両親とともに、聡悟くんの実家を訪れた。
庭に錦鯉が泳ぐ池までしつらえられた立派な和風の邸宅で、何度か遊びに来たことはあるものの、今日はさすがに緊張している。
家政婦の女性に通された広い和室で待っていると、私たち家族の到着を聞きつけた聡悟くんのご両親が、えびす顔でいそいそやってきた。
「いや~めでたい。とうとうこの日がきたな、梨木」
「ああ。今日は思いきり飲もうじゃないか」
父親同士が高らかに笑い声をあげ、母親同士もニコニコと言葉を交わしていると、廊下側の襖が開いて、聡悟くんが現れた。
スーツ姿の彼は私の両親に丁寧に挨拶をした後、私に甘い笑みを向ける。私もとっさに微笑みを返したけれど、うまく笑えたかなと少し不安になった。
両家の面々がテーブルをはさんで向かい合わせに座ったところで、さっそく婚姻届の記入をする流れになった。まずはお互いの父親が証人欄に必要事項を記入し、続いて聡悟くんが夫の欄を埋める。
書き終えた聡悟くんは私の背後にやってきて、婚姻届とペンを私に渡した。それから、すでに夫であるかのような優しいまなざしをして、私が記入を始めるのを待っている。
大丈夫……もう、迷いはない。ここにいる誰もが、私と聡悟くんの結婚を望んでいるんだもの。