天才外科医と身ごもり盲愛婚~愛し子ごとこの手で抱きたい~

「……逆だ。祝えないと思ったから、帰ってきた」
「どういう意味だ?」

 どことなく不穏な気配が漂う兄弟の会話を、両家の家族一同、固唾を呑んで見守る。

 やがて部屋の入口に立っていた勇悟がバッグを下ろし、歩み寄ってくる。そして目の前まで来ると、畳に片膝をついて(ひざまず)いた。

「絢美」

 勇悟の強いまなざしが、私の目をまっすぐに射貫く。

「俺にもチャンスをくれ。半年……いや、三カ月でいい。その間に、お前の心を手に入れてみせる」

 夢かと思うような申し出にただただ驚き、私は勇悟を見つめ返すだけで精いっぱいだ。

 どうして今になって勇悟はそんなことを? 彼の真意がわからないのに、勝手に期待を膨らませた胸が高鳴る。

「連絡もなしに帰ってきたかと思えば、なにを勝手なことを。今さらそんなことを言われたって、絢美も困るよな?」

 聡悟くんらしからぬ、苦々しい声音。私の肩を抱く彼の手に、ギュッと力がこもる。

「私……」
「頼む、絢美。俺は本気だ」
「虫がよすぎるんじゃないか? それならどうしてずっと帰国しなかった?」
「黙ってくれ聡悟。俺は絢美と話しているんだ」

 棘を含んだ言葉の応酬に、室内はますます険悪なムードに包まれる。

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